3年を迎えて
私たち心理カウンセラーの心のケアのスキルの伝承をしていきたい
震災直後からこの3年間被災地で、心のサポートを中心に、震災当初の物資支援や泥かきといったことから、戸別訪問での傾聴活動、仮設住宅へ移行した後のコミュニティーの再生を含めた心のケアなど、カウンセリングルームでお話を聴くだけではなく、常にかたちを変えながら心のケアを行ってきました。それは、被災された方々が日常の生活を送る中で身近にかかわる心のサポートが必要だと感じていたからです。
2013年の秋ごろを境に、被災された方々の心に大きな変化を感じました。将来が見えない不安感、がんばっても変わっていないように思える無力感。そこから、人と会うことに疲れを感じ、今まで機能していたコミュニティーが、人々の心にかえって負担となってきています。今まさに、心のケアのかたちを変えて、被災された方々の心に寄り添ったサポートをする時期と考えております。今は、何より心の回復が必要だと感じます。
「心の復興なくして、復興はない」。未曾有の大震災という体験は、きっと今後も消えずに残ってしまうことと思います。
そのため、長期的な展望に立ったとき、被災地に私たち心理カウンセラーの心のケアのスキルの伝承をしていきたいと思います。
3年目を迎えて必要と感じる
プログラムの実施報告、ご提案
心の回復へのプログラム
「人と会いたくない」、「人と会うのがしんどい」とコミュニケーションを避けたい気持ちが強くなっており、閉じこもりの傾向になると、孤立感や孤独感を抱きやすくなってしまいます。今は気持ちを癒し、回復が必要な時期。セラピードッグと一緒に訪問をさせて頂き、動物と触れ合うことで、人とは違ったぬくもりから、癒しを感じて頂く。すると、何も言わずに寄り添ってくれる動物からあたたかな気持ちを感じ、前を向いて歩いて行こうと思う気持ちをお届けできればと思います。
アニマルセラピー的かかわり活動を通して、心の支えを感じて頂けるよう、私たちは寄り添い続けてまいりました。
カウンセリングスキルの講習会
震災という未曽有の体験をされた方たちが、その体験から本当の意味で立ち上がるためには、心の復興、それは地域のみなさん同士が心を支え合えるということ。そのために、定期的に、全心連に所属している心理カウンセラーが講師となり、聴くことのスキルやセルフケアなど、被災地の方々にお伝えしていきます。人道支援をする方々にカウンセリングスキルを身に付けて頂くことで、コミュニケーションスキルが向上し、被災地の方々の心の安定や回復につながります。そうした地域の方々で心を支え合うことで、人と人とのつながりがより強くなり、さらなる復興に向けた礎になることと思います。
復興住宅に入居された方への心のケア
2014年に入り、復興住宅への入居も始まりました。担当させて頂いている仮設住宅より、復興住宅へ移る方もいらっしゃいます。仮設住宅とは別の、新たなコミュニティーでの新たな人との関係性を結ぶこととなります。気持ちも新たに、人との関係性を結べる機会でもありますが、隣人との関係ができるまでの心細さや不安感、また、支援が届かないことによる孤独感が出てくる方も多いと思います。また、仮設住宅では、支援員の方々の見回りなどが充実し、安心の中で暮らしていた環境から、個人での生活のベースに戻っていきます。今までの仮設住宅では狭く、隣人の声も聞こえてくるような、決して恵まれた環境ではありませんが、人の気配を感じていたこと、見周りの人が来る安心感があったことと思います。復興住宅では、仮設住宅のような支援は十分に得られません。そこで、復興住宅に入居された方々の心のケアと、コミュニティー作りが必要となってくると感じます。
多くのみなさまのご支援とともに、今後も全心連はしっかりと活動を続けていきたいと思っています。今後も引き続き、ご支援、ご協力をよろしくお願い致します。
TeamJapan300 被災地「心のケア」の一年
今、そしてこれからが本格的に求められる、メンタル面でのサポート
2011年3月11日に発生した東日本大震災。私たち、一般社団法人全国心理業連合会を柱としたTeamJapan300はその直後から被災地に向かい、200名を超えるボランティアの人たちとともに、実に200箇所近い避難所や仮設住宅、様々な場所で活動を続けてきました。その活動範囲は福島、宮城、岩手と非常に広い範囲にのぼり、様々なサポート活動をしてきました。
震災発生直後は物資の支援や、家にまた帰って住めるための泥のかき出しのサポートもしてきました。泥のかき出しをしながら、そこに住む住民の皆さんの話を聞いたり、仮設住宅や避難所でもたくさんの人たちの話を聞き、耳を傾け、リスニングボランティアという形で心のサポートをしてきました。
震災から数ヶ月たち、夏になりお盆を過ぎるころになると、被災地の様子は様変わりします。避難所がほぼ閉鎖になり、仮設住宅に移り住んでいった人たちはまた慣れない生活が始まります。そして毎日生きていくのが精一杯という状態から、自炊をし、自分の布団で眠り、少しずつ生活を取り戻して来ました。そしてそれと同時に浮き彫りになってきたのが、日々のフラッシュバック、罪悪感、家族を失った悲しみ、これからの将来の不安。たくさんの心理面でのダメージやストレスがまさにPTSDという形で強く表れてきたのです。
8月には初盆を迎え、多くの人たちが家族の供養の慰霊祭に参加する一方で、行方不明者の家族のみなさんがまだ家族はどこかにいると思う、心のふんぎりがつかないために心が落ち着かない、つらいという声もたくさん聞きました。国が復興ということを掲げ、みんなが前に進んで行こうとする中で、復興する気持ちになれない人々、回復をまだしていない人たちの気持ちはつらく、深く、内面に沈んでいきます。仕事を失った漁師さんたちが外に出る機会もなく、仮設住宅に閉じこもりきりになりました。
秋以降も労働環境は変わることなく、新しい職を探せない人たちもたくさんいました。入った仮設住宅では隣の人の声が気になるとか、子どもの声がうるさくて、周りの人とトラブルが起こるというような、仮設住宅ならではの心理的なストレスもありました。昨日まで仮設住宅の隣で、普通に会話をしていた奥さんが突然失踪してしまったと、強いダメージを抱えて話される方もいらっしゃいました。自ら命を絶つ人もいらっしゃるのも事実です。
そして冬になり、被災地は雪で覆われます。ボランティアの数も急激に減っていきます。仮設住宅に閉じこもりになった人たちのこころと身体を気遣うように、地元の保健師さんやNPO団体の人たちが個別の訪問を始めています。
2012年1月より自治体の要請を受けて、全国心理業連合会の心理カウンセラーが毎週被災地でこころのケアの相談員として活動しています(最低でも2012年12月まで継続予定)。
今からが本当の心のサポートの現場かもしれません。
3.11に。
そしてこれからも長くずっと寄り添っていきたいです。