〜こころの癒しセミナー&コンサート〜
釜石市で開催したコンサートは、ミュージックセラピーとして、素晴らしいイベントとなりました。
8月の2日・3日にミュージックセラピーを開催しました。このイベントは、もともと現地のみなさんに心地良い音楽を聴いてリラックスしていただこうというコンサートとして企画したのですが、せっかくの機会なのでカウンセリングのグループワークやセミナーも交えたミュージックセラピーとして提供する事になったものです。
当日は会場が満杯になるほど多くの方々にお越しいただきました。
始めにチームジャパン300のチームリーダーでもあるプロフェッショナル心理カウンセラーの浮世満理子から、コンサートを聴くにあたっての3つのお願いという話がありました。
1:耳で聴くだけでなく、体と心の全部で聴く
2:自分の気持ちを抑えようとせず、手拍子など体を動かして体で表現する
3:演奏者と共同して参加する
そして「今日、ここは安全な場所です。泣いてもいい場所です。」というお話がありました。
泣くことは恥ずかしいことではない。泣いても良い。そして、涙は「好きの涙から。悲しい涙よりも、好きの涙から。」というお話もありました。
じっとかしこまって音楽を聴くのではなく、主役は会場のみなさん。演奏者もカウンセラーも、みなさんの心が元気になるためにこの機会を設けたわけですので、みなさんに素敵な音楽に触れ、日頃のストレスや心にたまっているものをはきだしていただき、自由に感情表現をし、気持ちを豊かにしてリラックスしていただきたい、という思いで一杯でした。
やがて演奏がはじまり、竹田さんのキーボードと曹雪晶さんの二胡が奏でる優しい音色が会場を包みました。
演奏プログラムや曲順もとてもよく練られていて、会場は優しい空気で一杯になっていきました。やがて「千の風になって」や「花」などのみなさんもよくご存じの曲が演奏されると、みなさん自然に口ずさんだり涙を流されたりしていました。30分ほどで前半の演奏が終了。それからインターバルで浮世満理子先生によるグループワークをおこないました。
最初にやったのは、隣に人の背中に左手を載せて温もりを感じるというワーク。みなさんがそれぞれの左手を通してつながり、まるでその間を暖かいエネルギーが流れ出したかのように、ほっとした空気が流れました。
次に「プラスのストローク」というワーク。これは2人一組になって、相手のいいところを5つ伝えて褒め合う、というワークです。褒められた方は、「そんな、そんな」と謙遜したり、逆に「そうそう、その通り!」と言ってみたり。会場内は活気ある笑い声とたくさんの笑顔で溢れました。
後半の演奏は、活気のある元気な曲が主体。だんだん早くなる曲や活気のある曲に拍手も熱をおび、そして最後は会場内の全員で合唱して終わりました。
こうして演奏とカウンセリンググループワークを一つにしたミュージックセラピーは大成功。みなさん、リラックスして気持ちもほぐれ、涙を流され、それから笑顔になり、リフレッシュして会場を後にされました。
私は、釜石に常駐し、仮設住宅を回って心のケアサポートを続けていますが、改めてみなさんの心の奥にあるストレスを感じた思いでした。
普段、安心して感情をはきだしたり泣いたりできる場所はほとんどありません。むしろ被災地では、復興のみちのりも見えず、将来に対する大きな不安を抱える中で泣くことも許されないような厳しい現実があります。苦しくても涙を見せられない、泣いてはいられないというプレッシャーもあります。その中で、仮設住宅に暮らし大きなストレスを感じながらも日々を懸命に生きているみなさんに、少しでも安心できる場所、涙を見せても良い場所、みんなと一緒に感情を出してほっとできる機会を提供できたことが何よりも良かったと感じました。
また、2人組で褒め合うワークはとても効果があったと感じました。被災地の厳しい現実の前では、普段なかなか褒める事も後回しになってしまいますが、みなさん、照れながらも素直に喜んでいらっしゃいました。普段なかなか言えない言葉を口に出すことの効果も大きかったのではないかと思います。
演奏も素晴らしく、本当に効果の高い素敵なミュージックセラピーになったと思います。
いくつかいただいた感想をご紹介しましょう。
「1ヶ月に1回、このような場をもうけてください。カラダと心をほぐしに行きます。
アーティストからあたたかさを先生からは元気をもらいました。(38歳 女性)」
「とても素晴らしいひとときを過ごしました。頭の中と心がすっきりとなりました。
セミナーもわかりやすくすぐに理解できた。相手を褒めて、自分も褒められて・・
また会えることを楽しみにしています。(51歳 女性)」
「心の置き所をすこし見つけた感じです。(男性)」
「様々な支援が今も届けられますが、今日のような音楽・セミナーが合わさった参加型の支えは初めてでした。心に残る1日をどうもありがとうございました。(25歳 女性)」
「生の素晴らしい音楽が聴けて良かった。演奏は全部素晴らしかった。セミナーは優しい気持ちにさせる配慮を感じた。(58歳 女性)」
「初めて聴く二胡の演奏がすごくキレイで感動しました。音楽で幸せな気分になりました。好きだった歌はもちろん遠野物語。でも千の風は泣きました。手を背中に当てること、試してみます。(30代 女性)」
一方で、被災地ならではの考えさせられたコメントもありました。
「夕方よりもう少し明るい時間だと集まるかも。夜歩くのにまだこわいと思う人も多いので。(68歳 女性)」
「まだ泣けないけれど、泣ける時がわたしの一歩前進だと思っています。(68歳 女性)」
「今が心の荷が重い時期。そして時間の経過・・・ (68歳 女性)」
「もっと広くセミナーを知らせて欲しい (57歳 男性)」
今回、ミュージックセラピーを実施して、そして参加されたみなさんの反応や感想から学ばせていただいて、思ったことがあります。
それは、このような機会をもっとつくりたいということ、そして受動的に参加する音楽療法から、自分たちが参加して演奏も行うミュージックセラピーを実現したいと言うことです。今回のミュージックセラピーでは、インターバルでグループワークを行い、また参加されたみなさんが体を動かしたりさまざまな感情表現を行う機会にできたことで成果をあげることができました。次はさらに一歩進み、参加できる人は自分たちで演奏してみることもチャレンジしてみたいと思います。
釜石での心のケアサポートとカウンセラーとしての活動はまだまだこれからも続きます。
どうぞみなさん、被災地への関心と支援を忘れることなく応援してください。
釜石より下山でした。