2013年 釜石での活動報告
1月~3月
震災から2年が経とうとしています。そして、全心連が毎週、釜石での活動を始めてから1年が経ちました。震災で家が半壊だった方は修繕をして自宅に戻られている方も増えてきました。自宅に戻れてよかったと思っていたところ、その方が言われたのは「本当は帰りたくなかった。だって、この家の周りには遺体がたくさんあったんだよ。」と。その家にひとりぽつんといることの心細さ、淋しさは…。もしかしたら仮設に住んでいる時は決していい環境ではなかったけれど、人の気配がして安心だったのかもしれないのでは、と感じました。戸別訪問を続けてきた中で会える方は働いていない方だけです。働いている方のサポートができていないこと。限られた時間の中でどうサポートができるのかということを考え、商工会議所を通じて働いている方へ向けて「心のケア研修」を行いました。企業の方から職員の方のカウンセリングの依頼もありました。また、この時期には危機管理室から防災センターで被災をされたご遺族の心のケアの依頼があり「遺族会」で心のケアに携わらせていただくことになりました。
4月
2012年1月より自治体の要請を受けて毎週2回のボランティアをおこなってまいりましたが、さらに多くの方の心のケアの必要性と重要性を感じ、2013年4月より全国心理業連合会東北復興支部を開設いたしました。そのことにより、プロフェッショナル心理カウンセラーが常駐している環境が整い、これまで以上に手厚いサポートができる新体制がスタートいたしました。季節は春を迎え、日差しが心地よく感じる季節になり「あるくっこの会」も再開されました。「あるくっこの会」は震災後に眠れないという方が増えた際に、睡眠改善を目的としたウォーキングの会になります。また、歩きながらいろいろな方と話をすることを楽しみにされる方もいらっしゃり、コミュニティーの構築にも効果を実感することができました。
全心連東北復興支部
あるくっこの会(仮設近辺を散歩)
5月
復興釜石新聞にて、心のケアの連載がスタート。より多くの人に心のことについて知ってもらう機会にしていただいております。また、被災地で支援をしているスタッフの方への研修を実施。ご自身も被災に遭いながらサポート側にまわることは、本当に大変なことです。セルフケアの大切さを実感していただけた様子でした。
6月
平田地区でおこなわれていたあるくっこの会を鵜住居地区でもスタートいたしました。
鵜住居地区は被害も大きく、家が流された方も多く、また家が残った方も孤独や寂しさを感じていらっしゃいます。
そのために、語り合えるコミュニティーの場が週1回あることで、心の拠所になっていただけた様子でした。またこの時期から、NPO団体への心の支援活動も開始いたしました。震災のみならず、心のケアが必要とされている幅広い層の方への、活動の広がりを見せたのもこの時期でした。
7月
釜石・大槌地域復興情報誌『キックオフ』へ連載がスタートいたしました。震災直後からの活動を通して、たくさんの方々との出逢いの中で感じたことや、心の回復について、すぐに使えるワンポイントアドバイスなどをお伝えさせていただいております。
8月
暑さも増してきたこの時期、昨年6月から続けている「あるくっこの会」は、気温や体調を考えて、夕方の少し涼んだ時間帯の開催にしました。夏の涼風を感じ、少しでも夏の疲れからの解放と、暑さゆえ日中はこもりがちになることから、運動不足解消の時間にもしていただきました。また皆さんお互いに声を掛け合いながら自主的な会の運営へと変化していきました。しかし、お盆の時期を迎え、気持ちが落ち着かない、いつ仮設から出られるのかわからない現実に、不安と焦りが増し、住居問題においては個人格差があるためご近所の人には話せないなど、隣人との関係性が少しずつ変化してきました。こうした変化から、震災の話をする機会が減り、ご自身の中で感情を抑えることが増えていったように思います。そのため個別訪問での対応をさせていただき、身近な人には話せないことを話して頂く活動を行いました。
また8月10日に行われた鵜住居地区防災センターの慰霊祭にも参列させていただき、犠牲になられた方、ご遺族の方のご冥福を改めてお祈りさせて頂きました。地域のみなさまに寄り添う活動を今後も続けていきたいと思います。
9月
家族や親戚が集まるお盆が過ぎて落ち着きが戻るころ、ご家族が戻られた寂しさから不安や孤独を感じ、夏の疲れとともに体調不良を訴える方が増えてきたように思いました。また住宅問題やこれからの生活など、それぞれのプライベートに深く関連しているがために、隣人には相談できないことが増え、人と集まることに疲労感がではじめた季節でもあります。そのような状況の中、あるくっこの会の参加人数も減り、開催時間に、個別対応のかたちに変えてお話を伺うようにしてきました。そのため、お一人お一人のお話をお聴きする時間が増えてきました。また9月の自殺防止月間の取り組みで、釜石地域の自殺予防対策講演会では「ストレスとうまく付き合うコツ」と題して全心連代表理事 浮世満理子が講演をさせて頂きました。そして多くの方にご参加いただき、声を出して笑うことの効果などを体感していただきました。
2013年9月14日 復興釜石新聞
10月
紅葉の美しい季節になり、仮設の談話室で毎月1回行われるお茶っ子の会「すいすい会」では、秋の絵はがきづくりを体験していただきました。おしゃべりをしながら折り紙やきり絵をおこなうことで、昔を思い出したり、懐かしむ心や、季節を感じる心を体感し、日常とは違う時間を過ごして頂けました。お孫さんに送ってあげるという声も多く伺いました。また昨年反響のあったハンドベルと歌の会の開催もスタートいたしました。しかし、人とのかかわりに疲労感を感じ、集まることをしなくなった時期でもあり、「行けば気分も変わるのは知っていても、その前に人とかかわることに疲れてしまった」という声も聞こえてきました。こもってしまいがちな季節には、コミュニティーに参加していただく機会を提供してきましたが、今は気持ちを癒し、回復が必要な時期になっています。そのために、心理カウンセリングを、より多くの方に身近に感じて頂くために「今、心のチカラになること」と題して、釜石で初のシンポジウムの開催をさせて頂きました。「ストレスケア」と題して、笑うワークなど身近に使えるストレスケアの紹介し、今だからこそ、自分を大切にしていただくことの意味を考える時間にしていただきました。
井村久美子氏・浮世満理子トークライブ
パネルディスカッション