4月25日 牡鹿半島の孤立感 of TeamJapan300

TeamJapan300_logo01d.jpg


被災地のみなさんが元気な生活を取り戻すために
チームジャパン300は、継続的な生活支援を通して
メンタルケアをサポートしていきます。

牡鹿半島の孤立感

4月22日 牡鹿半島

今回の支援訪問で、牡鹿半島に入ったチームのレポートです。


午後から牡鹿半島へ。訪れたのは海沿いの小さな集落。
半島にはいって海沿いの県道2号を走り大きなカーブを曲がりながら海岸に下りると、突然目の前に一面瓦礫の浜の光景が飛び込んでくる。いきなり、何も無い光景が。
ここは美しい静かな入り江に家が並ぶ穏やかな漁師町だったところ・・・。それが、荒れた瓦礫が並ぶ荒涼たる平地に姿を変えてしまった。

b0223842_02190.jpg

衝撃にしばらく言葉が出ずに立ち尽くすのみ。聞けば津波は4回やってきて、すべてを破壊して持ち去ったという。目の前で1回、2回、3回、4回と津波が押し寄せ、何とかふんばって残っている家もつぎつぎになぎ倒し、これでもかというぐらいにその暴力的な破壊力を見せつけて自分たちの生活すべてを持ち去っていく。その光景を、なすすべもなくただ見守るしかなかった方々の胸の内を想像すると、発すべき言葉が見あたらない。
ここには美しいひっそりとした漁村が存在していたのだ。

訪問したのは、2カ所の避難所。ほんの数キロしか離れていないこの2カ所の避難所だが、避難所内の空気感は大きく異なり、その違いに懸念を持った。
片方は、石巻から行政関係の方や工事関係者が来ており、動きが感じられた。建物に亀裂が入って修復が必要ということもあったようだが。さらに、相当腹の据わったおばさん(60代ぐらいか)がお一人いらっしゃり、おばさん連中をとりまとめてコンロで食事を作り避難所をまとめておられた。なんというか、生活を建て直そうという気力と活気が存在していた。

それに対してもう一方は、完全に停滞してまったく動きや活気が感じられない状態。事務長さんともお話ししたのだが、みなさん共に大きな喪失感/無力感に支配されている感じで、復興は困難、と無表情に語る状態。
食料や物資は足りているので大丈夫、とおっしゃっていたが、最低限のレトルト食品だけで済ませているようで、一カ所目のようにおばちゃん連中が中心になって食事を作るという動きもなく、避難者の皆さんも無表情に教室でただじっとしているだけ。全体に重い沈痛な空気がながれていて、僕らが声をかけて回っても多くの方はあまり反応もない感じ。同行したカウンセラーは、ほとんどの方が鬱状態に入りつつあって、このままだと避難所丸ごと全員鬱病になりそうだ、と心配していた。

二つの避難所は、ほんの数キロの距離にあるにもかかわらず、いらっしゃる方々の生命感がまったく異なる。片方はなんとかここから立ち上がるぞ、という気力が残っているが、片方はその気力も残っていない、極端に言えば生きる屍になりかねない、そんな感じだ。
違いの一つは、子供の存在。片方は生徒が何人かいたが、避難所に滞在しているのではなく、自宅避難で帰宅している模様。もう一方は、避難所にいる子もおり、子供の笑い声や騒がしさ、活気がある程度存在している。
もう一つは、食事を作る人たちの存在。活気を取り戻している方は、たくましいおばちゃんが中心となって「食事を作ってみんなでしっかり食べる」という生活の第一歩に踏み出していたが、もう片方はそれがない。レトルトを食べているだけだと思われる。

「食べるものが足りない」という危機的な状況は脱しているが、じゃあ餓死しないための最低限のカロリーだけ補給してればいいか、というとそうではない。少なくとも「生活」を再建していく上で「食事」や「睡眠」はベースとなるモノで、それを建て直していかないと鬱状態が進行してしまう。

牡鹿半島の小さな集落は、集落全体が何も残っていない状態で、たしかに復興・再建にむけたチカラを取り戻すのはハードルが高い。だが、ここに限らず、最低限の物資は足りていてもこのような停滞した鬱状態の避難所が牡鹿半島には結構あるのではないか?

まずは炊き出しに行って、暖かい食べ物を作り、旨そうな匂いに空腹を感じ、食べて多少の笑顔を取り戻す、という生命力の刺激が必要だと感じた。
大きな都市圏はバックアップできる地域が後ろに控えているが、牡鹿半島の小さな集落は、もともと孤立しがちなところに集落丸ごと被害に遭っているので、被災レベルが軽度な人間が皆無。都市圏は普通通りに生活できているエリアと緩やかにつながっているが、海沿いの集落はそうではない。だれもバックアップできる人間がおらず、孤立感と無力感が日増しに大きくなっていっているところも多いのではないかと思われる。
牡鹿半島の集落への集中的な支援、生活を取り戻していくためのきっかけ作り、後押しが必要だ。
今後我々のチームとしても、一つの重点課題として取り組みたい。